一粒一粒よく噛んで、大事に食べなさい
「お米は一粒一粒よく噛んで、大事に食べなさい」
子供の頃、母に口うるさく言われた言葉だ。
(分かってるよ、そんなこと)と心の中で呟きながら、
モグモグとよく噛んで、お米を食べたものだ。
それが、いつの頃からか、一粒一粒を大事にしないで
食べるようになった。
(スーパーやコンビニに行けば、当たり前のようにお米を買うことができる)
そう思うようになり、
大盛りのご飯を、感謝の言葉も口にしないでペロリ。
母から言われたことを思い出すこともあったが、
「一粒一粒噛んで食べるなんて面倒臭い」と言って、大事に食べなかった。
ある時ふと、母と同じように、鍋でお米を炊いてみようと思った。
ボウルの中に水を入れて米をとぎ、鍋のガスコンロに火をつけて・・・
鍋でお米を炊くのは、想像していた以上に大変だった。
いつもスーパーで購入したご飯を食べていたので、母がこんな苦労を
しているとは全く知らなかった。
「鍋でお米を炊くと、家族みんなで食べることができて幸せな気持ちになるから」
と言って、時間と手間のかかる鍋でお米を炊いていた母。
「一粒一粒噛んで食べるのは面倒臭い」と言って、
大事にお米を食べなかった自分自身を、大きく恥じた。
鍋で炊いたお米は、ホカホカで、甘味があって、とても美味しかった。
ひとりで食べたから、ちょっぴり寂しかったけど。
その日から、お米を一粒一粒よく噛んで食べるようになった。
1回、2回、3回、4回、5回・・・と噛み締めるたびに、
鍋で炊いたお米を家族みんなで分け合って食べた、子供の頃の記憶が蘇る。